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人間発達基礎講座 2006年度(2007年2月)〜
人間発達基礎講座は、人間の発達のすじみちをできるだけ広い視野から系統的に学ぶことを目的にした講座です。発達のそれぞれの時期がどのような特徴を持った時期であるのか、日々の保育・教育実践・福祉実践で大切にすべきことがらについて、さまざまな分野の成果から学んでいただこうと企画しています。とりあげる発達の時期について、2日間かけてさまざまな面から迫ります。
会場:大津プリンスホテル(滋賀県大津市)
後援:滋賀県・滋賀県教育委員会・滋賀県社会福祉協議会
講座の内容は次の通りです。テキストは実費でお分けしています。
第3回は2009年1月31日(土)〜2月1日(日)、テーマとする発達の時期は4歳頃の発達の節目(2次元可逆操作期)です。
人間発達基礎講座 第2回 テーマ ゆたかな“対の世界”を実践の中で――2歳半ばから4歳頃までの発達――
2008年1月26日(土)
10:50〜12:20
「発達保障の課題2008」
人間発達研究所運営委員会
発達保障にかかわる情勢や,今回とりあげる発達の時期(2次元形成期)の実践課題など,今回の講座にあたって共に考えあいたい点を提起します.
第1講義 13:40〜15:40
「対の世界で揺れて育つ――2歳元形成期の発達――」
白石恵理子氏(滋賀大学 教授)
幼児期への飛躍的移行をなしとげた子どもたちは,自分のつもりや創造性で外界に働きかける喜びを積み上げ,友だちにあこがれて新たな「ねがい」をふくらませます.でも,まだまだうまくいかないこともたくさん.違いや変化にも敏感になって,それが新たな不安に結びつくこともあります.「形成期」(移行期)であるだけに,いわゆる「ふしめ」とは異なり,発達的な不安定さも目立つときです.でも,不安定で揺れる時期だからこそ,内面で大事なものを育んでいきます.本講義では,2次元形成期の発達,そしてこの時期の発達保障実践の基本原則についてお話ししたいと思います.
第2講義 16:00〜17:30
「自分の世界をひろげる子どもたちを支える」
大下二三子氏(滋賀文教短期大学 教授)
2歳児・3歳児は自らの発達の願いをどのように実現させているのでしょうか.またその世界はどのようになっているのでしょうか? 2歳児になると,他者を意識し,自分に気づくようになり,心が揺れ動きます.自らを調整し,復元しようとする子どもたちを支える保育の場や働きかけを模索していきたいと思います.そして,「自分の世界」をひろげ,友達との中で新たな挑戦をしていく子どもたち.その生活や遊びの具体的な姿から学び,どのような保育が求められているか,実践の課題について考えていきます.
特別講義 19:00〜20:30
「沖縄の証言――沖縄戦集団自決死の実相――」
安仁屋政昭氏(沖縄国際大学名誉教授)
第二次世界大戦終結から62年がたち,戦争を体験した方々も高齢化し,なまの証言,体験談を聞く場が少なくなりつつあります.おりしも,沖縄戦での「集団自決」をめぐって,日本軍の強制があったか否かで訴訟がおこなわれ,軍の関与を削除した高校教科書検定の取消を求める運動が起こっています.
講師は歴史研究の立場から,長年沖縄戦の聞き取り調査をしてこられました.そのご経験をじっくりと話していただきます.
1月27日(日)
第3講義 09:00〜10:40
「子どもとの豊かなコミュニケーションを築く――インリアル・アプローチによる――」
里見恵子氏(大阪府立大学 准教授)
インリアルとは,1974年コロラド大学のR.Weiss博士によって開発された言語発達遅滞幼児のためのコミュニケーション・アプローチです.子どものコミュニケーションの問題に目を向けるだけではなく,聞き手であるおとなのコミュニケーション能力にも目を向け,おとなの関わり方やことばかけを調整することで,子どもが伝えることへの自信と自発性を持つという考え方です.このインリアルの考え方から,コミュニケーションとは何か,豊かなコミュニケーションを築くためにはどうすればいいのかを考えたいと思います.
第4講義 11:00〜12:30
「障がいのある人と家族の“地域で暮らす”を支える相談支援」
坂本 彩氏(相談支援事業所けあ処ガル 相談支援専門員)
障がいのある人やその家族から相談を受け,いろいろなサービスを組み合わせる「サービス計画書」を作りながら「これでいいのかな」と感じる時があります.確かにサービスがたくさんできて,家族以外にも“当事者を支える”人たちが増えてきています.一人の人がさまざまなサービスを使い,たくさんのひとに支えられ,表面的に生活はつながっているように見えます.けれども,なんだか当事者の気持ちとはうまくつながっていかない,しっくりこない,そう感じることがあります.ここでは,そんな私の「ひっかかりながらの相談活動」から,「障がいのある人が主人公の24時間365日の生活」をどうとらえ,それを支える人たちがどうつながっているのか,そしてそのための相談支援者の役割などについて考えてみたいと思います.
第5講義 13:50〜15:20 第五講義 90分
「若者たちはいま――成長の困難と自立の課題」
中西新太郎(横浜市立大学 教授)
この10年間にすすんだ社会経済変動と文化環境の変化のなかで,青少年が育ち,社会に出てゆくかたちが大きく変化しています.若者たちの意識,文化行動はいまどのように変化しているのか,青少年の自立を支えるべき政策にどんな問題があるのか,日本の青少年が社会の主人公(主権者)として生きてゆけるためにどのような支援が求められているのか,検討し考え合います.
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人間発達基礎講座 第1回 “つもり”を重ねあわせて――ことばの扉をひらく・1歳半頃の発達――
2007年2月17日(土)
10:50〜12:20
「発達保障の課題2007」
人間発達研究所運営委員会
今,教育・福祉・保育など発達保障に関わる実践現場は,「個別化」が強調される一方で,仲間づくりなどが位置づきにくい状況にあります.また,企業間の競争,雇用分野での多様化をてこにした格差と競争の拡大などによって,協同と連帯の基盤を見いだしにくくなり,格差の固定化が生じています.
発達保障論は,個人・集団・社会の3つの系が相互に関係しながらゆたかな人間発達が実現されると考えてきました.ここでは,今日的課題をふまえつつ,この時期の発達と発達保障のあり方を考えます.
第1講義 13:40〜15:40
「1歳半頃の発達理解の基本――“つもり”をもって生活する主体の誕生――」
木下孝司氏(神戸大学発達科学部助教授)
1歳半頃に発達の質的転換期があることは,いろいろな立場から指摘されています.この講義ではまず,この質的転換期はどのように特徴づけられるのかについてお話しします.またあわせて,こうした変化を引き起こす要因についても考えていきます.その上で,教育・保育,療育において,“つもり”をもって生活する主体の誕生にふさわしい実践のあり方について,検討していきたいと思います.
第2講義 16:00〜17:30
「自治体から創る特別ニーズ教育――能力原理から必要原理への転換――」
渡部昭男氏(鳥取大学地域学部教授)
文部科学省が主導して進める「特別支援教育」は必要な予算措置を講じていないなど大きな問題を抱えていますが,「個々のニーズに応じた教育」の保障という方向性は,能力原理から必要原理への転換という歴史の進展方向に添うものです.個々のニーズを踏まえた発達保障の仕組みを構築するには,当事者に身近な現場や自治体が主体となって成果を蓄積していくことが肝要です.「現場主義」「地方民権」として注目される鳥取県(都道府県レベル)及び埼玉県志木市(市町村レベル)を事例に,その可能性と教訓を抽出したいと思います.
参考文献:渡部・新井編『自治体から創る特別支援教育』(クリエイツかもがわ),渡部・金山・小川編/志木教育政策研究会著『市民と創る教育改革――検証:志木市の教育政策』(日本標準),渡部『格差問題と「教育の機会均等」』(日本標準),渡部・寺川監修/鳥取大学附属養護学校著『「自分づくり」を支援する学校』(明治図書)
特別講義 19:00〜20:30
「児童文学からのメッセージ――子どもの本の力,私たちの生き方――」
清水眞砂子氏(青山学院女子短期大学教授・評論家・翻訳家)
「多くの批評家は,小説が幸福を描いていはしないか,と鵜の目鷹の目で見張っており,見つけ次第,その小説を卑俗で,感傷的で,(いってみれば)女性向きの作品だと片付けてしまう」こう言ったのは,「ゲド戦記」の作者ル・グウィンでした.文学作品においては,不幸を描く方が質が高いと思われる傾向があるのですが,幸福のありようをこそ描くのが子どもの文学で,現在を生きのびるためのマニュアルがそこここに用意されています.子どものものと思われがちな,実は実用の書,児童文学を見つめ直してみませんか?
書著:『子どもの本の現在』(岩波書店),『学生が輝くとき』(岩波書店),『幸福に驚く力』(かもがわ出版)他
訳書:「ゲド戦記」全6巻(岩波書店),『そしてねずみ女房は星を見た』(テン・ブックス)他
2月18日(日)
第3講義 9:00〜11:00
「子どもの思いにこころをよせて」
西川由紀子氏(華頂短期大学助教授)
1歳半を迎える子どもたちは,自分の思いをもって行動します.その子どもたちが集団で生活するとき,思いがぶつかり合います.ときには「かみつき」などのトラブルに発展し,現場の悩みとなります.けれど,互いの思いをぶつけあうとは,相手の思いに気づくことでもあります.集団で過ごすことによって獲得される力だと思います.「かみつき」等のトラブルを減らしつつ,どう子ども集団を組織していくのか,具体的な実践を紹介して考えたいと思います.
著書:『子どもの思いにこころをよせて――0,1,2歳児の発達』(かもがわ出版)
共著:『「かみつき」をなくすために――保育をどう見直すか』(かもがわ出版)
第4講義 11:20〜12:20
「障がいの重い人たちの家族と生活を支える」
田村和宏氏(大津市障害児者地域生活支援センター)
障がいの重い人たちは,ことばをもたない人たちが多く,何ごとにつけ動かされてしまいがちになることもしばしばです.それゆえに,私たちは本人さんの内面の願いを受けとめながら支えるということが必要になります.身体的な制約なども多いため,働きかけが本人さんの内面にしみこんでいく時間というのも,一朝一夕にはいきません.また年齢によっても,生活経験の幅からみせる姿はいろいろです.一方で情動的なことは研ぎすまされていて,ときにその姿から,私たちは人間らしさにも触れることもしばしばです.今回は,障がいの重い人たちの生活を輝かせていく実践における視点について,学びあいたいと思います.
第5講義 13:50〜15:20
「子どもは未来の希望! 保育制度改革と私たちの課題」
上野さと子氏(全国保育団体連絡会会長)
これまで,保育制度,幼稚園制度が果たしてきた役割を確認しつつ,現在すすめられている認定子ども園制度などの「保育制度改革」が何をもたらそうとしているのか.子ども権利条約を実効あるものにしようとする世界の動きにも学びつつ,歴史をきりひらくために我々が何をなすべきか,考えあいます.
人間発達講座 1999年度(2000年2月)〜2005年度(2006年1月)
第7回人間発達講座 わたしの中の私たち――9,10歳の節目以降――
2006年1月28日(土)
10:30〜12:00
「発達保障の課題2006」
人間発達研究所運営委員会
障害者自立支援法,さらには医療や年金など社会保障制度の「改革」が新しい局面をむかえ,さまざまな矛盾が噴出しています.また,憲法や教育基本法とその理念を守っていく一層大きな努力が求められています.
より多くの人たちと手をむすんで,一歩一歩前進する取り組みを始めるために,見落としてはならないことは何でしょうか.検討すべき課題や大切にしたい教訓を,個人の発達と集団の発展,社会の進歩という面から検討したいと思います.
第1講義 13:30〜15:15
「少年期の扉をひらく」
加藤直樹氏(立命館大学産業社会学部 教授)
本講座シリーズ最後の今回は,9,10歳頃の飛躍を取り上げますが,それは「おとな」への出発点としての意味を持っています.「少年期の扉をひらく」ということは,実は人間発達の上で生まれて以来かつてなかったほどの,きわめて大きな質的発展を意味すると考えられます.
この講義では,このシリーズで学んできた「個人の系の発達の階層-段階理論(田中昌人)」における9,10歳頃の節目の位置づけを解説しつつ,全体としては「おとなになること=社会の担い手になること」ととらえて,社会的自立を目指す取り組みへの課題を問題提起します.
(講師紹介:専門は発達心理,社会福祉学.1970年代半ばから聴覚障害児教育において指摘されてきた“9歳の壁”を発達的に検討してこられました.人間発達研究所運営委員長) 著書:『障害者の自立と発達保障』(全障研出版)他
第2講義 15:45〜17:30
「子どもたちに表現の喜びと生きる希望を」
土佐いく子氏(大阪市立加賀屋小学校教諭)
「生まれてこんかったらよかった……」とつぶやく1年生.七夕の願いごとに「おとなになったら働ける仕事がありますように」と書く子どもたちに胸を痛めています.ますます作文教育の出番かなと実感しています.生活をみつめることで自分に対するいとおしさや生きる希望を育てたいです.言葉は今,自立と学力の鍵を握っています.安心して自己表現ができる時,子どもたちは輝きます.
(講師紹介:「生活綴方」を一つの軸に教育実践を展開されています) 著書:『子どもたちに表現の喜びと生きる希望を』(日本機関紙センター)他
特別講義 19:00〜20:30
「地球に平和を子どもに自己肯定感を」
高垣忠一郎氏(立命館大学産業社会学部 教授)
思春期の子どもたちが種々の問題を噴出させています.第2の誕生が難産になっている苦しみがそういう形で現れているのだと思います.なぜそうなっているのか,その背景を「平和」と「自己肯定感」をキーワードにして語りたいと思います.
(講師紹介:専門は臨床心理.週1回病院の精神科で登校拒否の子どもやその親をカウンセリングし,思春期の心の問題と病理について研究しておられます) 著書:『生きることと自己肯定感』(新日本出版社)他
2006年1月29日(日)
第3講義 9:00〜10:30
「時代を拓いた教師たち」
田中耕治氏(京都大学大学院教育学研究科 教授)
戦後日本の教師たちは,世界的にみても水準の高い教育実践を展開し,教育の理論と実践に大きな影響を与えてきました.この講義では,「村を育てる学力」を追求した東井義雄,授業づくりの重要性とその方法原理を示した斎藤喜博,「仮説実験授業」の庄司和晃という三人の小学校教師を取り上げて,彼らが取り組んだ教育実践とそこから引き出された教育理論の特徴について解説するとともに,その現代的な意味について考えてみたいと思います.
(講師紹介:専門は教育方法学.教育評価から授業論まで研究されています.日本教育学会常任理事など) 著書:『時代を拓いた教師たち』(日本標準)他
第4講義 10:50〜12:20
「軽度発達障害をかかえる人たちの学びと生き方」
田中良三氏(愛知県立大学文学部児童教育学科 教授)
名古屋市にある見晴台学園は,LD(学習障害)・ADHD(注意欠損多動性障害)・高機能自閉症など,軽い発達の遅れを持つ子ども・青年が通うNPO法人立の学校です.そこでの16年間の取り組みから,学齢期から青年期に至る学ぶ喜びと卒業後の働くことを真中にすえた自分らしい生き方を追求する実践を紹介します.
(講師紹介:専門は障害児教育,障害者福祉.見晴台学園研究センター長<元学園長>) 著書:『LD・ADHDが輝く授業づくり』(クリエイツかもがわ出版)他
第5講義 13:50〜15:20
「地球時代の教育課題――平和・人権・共生の文化を――」
堀尾輝久氏(東京大学名誉教授)
戦争と平和,核の問題,環境問題など,地球上の全てのものが一つの運命的な絆でつながっているという感覚がある「地球時代」.その地球時代の認識の中に日本の歴史を置き直してみると,日本国憲法の成立を含む戦前・戦後の大きな転換,そして九条の意味というものが,まさに地球規模での問題提起性をもっているということがわかるのではないか.
地球時代を生きる私たちに課された課題は何か考え合いたいと思います.
(講師紹介:専門は教育学・教育思想.東京大学時代は20年近く「平和と教育」のゼミを続けられました.日本教育学会元会長,民主教育研究所代表) 著書:『地球時代の教養と学力』(かもがわ出版)他
第6回人間発達講座 心は時空を翔る――5〜6歳頃の発達――
2005年2月19日(土)
10:00 開場
11:00〜12:20
「発達保障の課題2005」
人間発達研究所運営委員会
福祉の市場化をはじめとする社会福祉基礎構造改革は,国民の生活や基本的人権のあり方にさまざまな波紋を与えています.特に危惧されるのは,生活の基本にかかわる分野でで,自己責任が強調され,予算の制約を理由に既存の制度や施設,施策の見直しがすすめられようとしていることです.「人間らしく生きること」「人間としての尊厳が守られること」という基本的な人権を守り発展させながら一人ひとりの発達を保障するために何が求められているのでしょうか?
発達保障実践にかかわるこのような情勢や,今回とりあげる発達の時期における実践課題など,今回の講座にあたって共に考え合いたい点を提起します.
第1講義 13:40〜15:25
「子どもたちの声と教育改革の方向」
田中孝彦氏(都留文科大学教授)
この30年,日本の子どもたちの世界では,「不登校」「高校中退」「社会的引きこもり」,「荒れ」「非行」「少年犯罪」,「学習離れ」「学級崩壊」など,人間形成の「危機」の深まりを感じさせる現象・問題・事件が次々に起きてきました.これに対して,社会の表面では,子どもたちを「生きる力が衰弱している」「学力が低下している」と決めつけ,彼らに「競争」への参加を求め,「学力」の刻み込みをはかり,「秩序」への適応を強制する「教育改革」論が声高に叫ばれるようになっています.
しかし,子どもたちの声に耳を傾ければ,彼らが,「いらだち」「不安」「恐れ」をためながら,同時に,「このままでおとなになれるのか」「どう生きていったらよいのか」という生き方に関わる問いを広く深く発していることがわかります.子どもたちの声を聴き,彼らの問いを共に考えるということこそ,今日の子育て・教育改革の原理に据えられねばならないのではないでしょうか.
この講義では,子どもたちの声と問いを具体的に紹介しながら,現代の人間形成の基本的な課題,子どもの生存・成長を支える新しい共同の必要性,教育と学校の改革の方向について考えたいと思います.
第2講義 15:45〜17:30
「高機能自閉症・アスペルガー症候群の発達と教育的対応」
荒木穂積氏(立命館大学教授)
特別支援教育の推進や発達障害支援法の制定などの動きとも関わって,高機能自閉症・アスペルガー症候群に注目が集まっています.これらは,いわゆる自閉症スペクトラムの中に位置付きますが,そうした障害像の特徴と発達的変化について,象徴機能および遊びの発達の視点から検討します.あわせて教育的対応の視点を学びます.
特別講義 19:00〜20:30
「国連・障害者権利条約審議の経過と特徴」
玉村公二彦氏(奈良教育大学助教授)
「障害者の権利と尊厳の推進と保護に関する包括的かつ全面的な国際条約」(障害者権利条約)の制定に向けた作業が国連ですすんでいます.従来も「障害者の権利宣言」(1975年),「国際障害者年」(1981年)など世界的な規模での取り組みがすすんできましたが,今回の権利条約が制定されれば,子どもの権利条約と同じように各国政府への影響力が飛躍的に高まります.
今回は,2004年に開催された第3回と第4回の特別委員会を傍聴した講師から,その討議のようすを学びます.
2005年2月20日(日)
第3講義 9:00〜12:40
「生後第3の新しい発達の原動力の発生と発達保障の課題」
田中昌人(人間発達研究所所長)
1次元可逆操作と2次元可逆操作の獲得に基づく人格の発達的基礎の形成によって,人間進化の価値の基本を繰り込み,総合的に高めた幼児は,通常の場合,5歳なかばから7歳にかけて,生後第3の新しい発達の原動力を発生させて,いよいよ文明進化の基礎の獲得に向かいます.
それを@ 生理的基礎,A 発達的な第3の世界の充実,B 発達的な3次元の形成,C 新しい基線と基点の操作の獲得,D 転倒に基づく生後第3の新しい発達の原動力の発生,E 新しい交流の手段の発生,F 幼い自己の形成,G 教える力の獲得,の点から述べ,少子化の下における教育改革や幼・保一元化にあたって重視すべき発達保障の課題をまとめます.
第4講義 14:00〜15:30
「“信頼・協力”が“競争・戦争”の時代を変える」
加茂利男氏(大阪市立大学教授)
地球規模の経済活動の進展や福祉をはじめとするさまざまな公的部門の市場化で,国家のありようも,「小さいが強い」政府にと大きく変わろうとしています.国民生活の基盤となる福祉などにも市場化の波がおよびはじめています.こうした中で「住民自治」と「団体自治」を基本とする地方自治体はますます重要な役割が期待されているといえます.
そうした住民自治の発展が,「信頼と協力」を軸にした社会連帯と結びつくとき,グローバリゼーションのもとでの市場化によって引き起こされる競争や戦争への流れを食い止める大きな力を発揮できる可能性があるのではないでしょうか.
ここでは,時代をきりひらく方向と展望を地方自治に焦点をあてて考えあってみたいと思います.
第5回人間発達講座 心をことばの翼にのせて――4歳頃の発達の節目を中心に――
2004年1月31日(土)
10:00 受付開始
11:00〜12:20
「発達保障の課題2004」
人間発達研究所
発達保障実践にかかわる情勢や,今回とりあげる発達の時期(2次元形可逆操作期)の実践課題など,今回の講座にあたって共に考え合いたい点を提起します.
第1講義
13:50〜17:30
「2次元可逆操作期の発達と発達保障の課題」
田中昌人(人間発達研究所所長)
発達的な2次元形成の自由度が高まり、重心制御が進み始めると、通常、3歳なかばから4歳なかばまでをかけて、2種類の2次元を、発達の下部連関では、並列的結合、基本連関では、交差的結合と内向きの制御の前進、上部連関では、系列的結合、内部連関では、転倒的結合を行って、充実してきた自我に自制心をもたらすことを具体的にのべます。
発達に障害がある場合は、基本連関を中心に自制心を形成し、第1段階の書き言葉に代表される交流の手段を用いて自主的に自治的な活動を展開します。そこに複数の質の異なる集団と時空間軸の教育的回路を整え、労働権を保障していくことが発達保障の基本になることをのべます。
特別講義
19:00〜20:30
「わたしの出会った素敵な実践」
近藤郁夫氏(愛知県立大学教授)
講師は,著書(『教育実践』三学出版)の中で,教育実践とは「成長・発達してやまぬ子どもという主体に,同じく成長・発達していく存在たる教師・指導員・保育者等が,子どもたちとともに生活を創造しつつ,同時にその生活に導かれつつ,子どもたちに働きかけ,働きかえられて,ともどもに自己を育んでいく営み」「人間的呼応の営み」だと述べています.そんな講師の経験の中から,心に残った出会いを紹介していただきます.
2004年2月1日(日)
第2講義
9:00〜10:15
「多動傾向を示す子どもたちの発達支援」
別府悦子氏(中部学院大学助教授)
学校教育の現場では多動で集団学習に困難を抱える子どもたちが増えているといわれています.そうした子どもたちの中には,ADHD,高機能自閉症などの発達障害のある子どもたちもいると言われますが,その子たちが示す姿を幼児期の自我や自制心の発達を関連づけて検討することの重要性が指摘されています.今回は,そうした子どもたちの発達と援助について,学校や保育所への巡回相談の経験を持つ講師から,具体的な留意点などを学びます.
第3講義
10:35〜12:20
「子ども虐待と子育て支援」
櫻谷眞理子氏(立命館大学教授)
社会的,経済的,心理的,精神医学的要因などが複雑に絡み合い,子ども虐待は年々増加しているとの報告があります.被虐待児は0歳〜5歳が全体の約4割を占め,中には死に至るケースも報告されています.
ここでは,こうした子ども虐待について,子どもや親をどのようにサポートしていけばいいのかを学びます.
第4講義
13:50〜15:20
「社会保障の市場化・営利化と私たちの未来」
横山寿一氏(金沢大学教授)
経済市場の国際化(グローバリゼーション)がすすんでいます.日本政府がすすめている「構造改革」の主要な部分に,社会福祉基礎構造改革,医療制度改革,介護保険制度など,社会保障制度の改革がありますが,講師はこれらが社会保障自体の必要性からではなく,経済社会の構造改革の必要性から求められていると分析しています.
これらの改革が導く私たちの未来はどんな未来なのか,福祉や教育の担い手として私たちはこれにどう向き合っていくのかを考え合いたいと思います.
第4回人間発達講座 “対の世界”をひらく――2歳半ばから4歳頃――
2003年2月8日(土)
10:00 受付開始
11:00〜12:10
「発達保障をめぐる課題2003」
人間発達研究所
発達保障実践にかかわる情勢,今回とりあげる発達の時期(2次元形成期)の実践課題など,共に考えあいたい問題について提起します.
第1講義
13:30〜15:00
「ごっこ遊びの秘密」
神谷栄司氏(仏教大学教授)
“対の世界”に入ると,子どもたちの世界ではごっこ遊び始まります.それが成立する上で話しことばがどのような意味を持っているか,“ごっこ遊び”に夢中になる子どもたちの内面にはどのような願いが存在しているか,それを大切にしてゆくために実践はどのような視点を持つ必要があるのか,などについて学びます.
第2講義
15:30〜17:30
「手のひらからひろがる世界を通して発達を学ぶ」
山田宗寛氏(滋賀・唐崎やよい作業所)
“対の世界”の世界にあって,生活経験が積み重なることで,絵画や粘土などをもちいた表現もゆたかになっていきます.それらが製品となってゆくこともありますが,発達保障実践という点では,表現したいと思えるような日々の暮らしづくりなども重要な課題です.実践家にとっては,このような作品からそれを生み出した生活や内面をつかむ努力も求められています.この講義では,成人期の障害を持つ人たちの粘土や絵画の実践から,教訓や留意点を学びます.
特別講義
19:00〜20:30
「わたしたちが生き生き働き続けるために」
垰田和史氏(滋賀医科大学助教授)
学校,福祉施設,保育所など,発達保障の現場で働く人たちの健康問題がクローズアップされています.健康を害して「やりがいのある仕事なのに」と悔しい思いをしながら仕事を辞めることになった人もたくさんいます.どのような仕組みで健康問題が起きるのか,職員集団としてお互いの健康を守りあうためには何が必要なのか,この特別講義で考えてみませんか.
2003年2月10日(日)
第3講義
9:00 〜13:40 (11:30〜12:40 昼食・休憩)
「2次元形成期の発達と発達保障の課題」
田中昌人(人間発達研究所所長,龍谷大学教授)
発達の各連関で大文字で書くT次元形成をおこない,自我を拡大させてきた2歳児は,通常2歳なかばごろからその自我を充実に転じて発達的な2次元の世界を2
つの過程を経て形成していきます.それは,あそびの世界の拡がりに抑制を利かせ,2種類の1次元を組み合わせて新しい1つの単位「2次元」を形成し,経験的な学習能力を急速に高め,身辺の自立を進め,描画における「顔」の時代,2歳児どうしの会話がはじまる世界です.この時期の自我の充実が発達的に貧しくならないようにしていく方向を考えます.
第4講義
14:00〜15:30
「新しい福祉国家を構想する」
二宮厚美氏(神戸大学教授)
社会福祉基礎構造改革は,支援費制度導入で新しい局面をむかえることになります.この間,福祉の営利化,商品化など,利用者や家族の権利擁護をかかげて改革がすすめられてきていますが,本当にそうでしょうかまた私たちが願う福祉のあり方とはどんなものなのでしょうか.講座をしめくくるこの講義では,そうしたわたくしたちの願いを太く大きくたばねてゆくために今必要とされる視点は何か,そのためどんな力を高めることが求められているか,を考える機会にしたいと思います.
第3回人間発達講座 ことばとつたえあいの世界に――1歳半ごろの節を中心に――
2002年2月9日(土)
10:00 受付開始
11:30〜12:30
基調報告 人間発達研究所
第1講義
13:40〜15:10
「保育園における生活づくりを考える」
渡辺保博氏(静岡大学教授)
保育所や学校は子どもたちが目ざめている時間の大半を過ごす生活の場です.そこでの生活づくりは実践の一つの大きな視点です.“1
歳半ごろの発達の節目”にさしかかる子どもたちは,日々の生活の主人公として大きな一歩を踏み出そうとします.できることが増えることはもちろん大切ですが,この時期の生活づくりを考えるとき,はたしてそれで充分なのでしょうか.
ここでは,保育所での教訓をもとに,この発達の時期の生活づくりの視点を学びます.
第2講義
15:30〜17:30
「人間の発達と歩行」
砂川 勇氏(滋賀医療技術専門学校副校長)
「歩くようになって,声が出るようになったなあ」などと感じられたことはありませんか? 私たち人間にとって,歩行の獲得は文字通り新しい発達の新しい舞台となります.
ヒトが進化の長い歳月をかけて獲得した歩行は,発達にとってどのような意味を持っているのでしょうか? また,ゆたかに歩く力を育ててゆくためにはどのような点に着目すればよいのか,考えてみませんか?
特別講義
19:00〜20:30
「チンバンジーの親と子のきずな」
松沢哲郎氏(京都大学霊長類研究所教授)
数字や漢字をあやつるチンパンジー,アイは,2000年4月にアユムを出産し,ただ今子育て真っ最中.「ヒトと暮らしているアイはどんな子育てをしているの?」「ヒトから学んだことを息子に伝えられるの?」などなど,聞いてみたいことがいっぱい.24年間チンパンジーと暮らしながら,その知性を探る研究を続けてこられた成果からもたくさんのことを学びたいと思います.
参考文献 松沢哲郎著 おかあさんになったアイ 講談社 2001
2002年2月10日(日)
第3講義
9:00〜13:40(11:30〜12:40 昼食・休憩)
「乳児期から幼児期への移行期における発達と発達保障の課題」
田中昌人(人間発達研究所所長,龍谷大学教授)
“1歳半ごろの発達の節目”で,人はめざましい変化を見せます.その変化にはどんな特徴があるのでしょうか? またそうした変化の準備はいつ頃から始まるのでしょうか? さらに発達に障害がある場合には,どのような点に配慮する必要があるのでしょうか? ここではこうした点をじっくり学びます.
第4講義
14:00〜15:30
「現代日本の家族をどうみるか」
布施晶子氏(札幌学院大学教授)
家族とは,人を育み,人が育まれる場です.しかし,一方,家族のあり方はきわめて多様になってきています.こうした変化は,なぜ,どのようにして,起きているのでしょうか? また,そうした変化の中で私たちが大切にすべきことはなんなのでしょうか?
ここでは,家族のこれまでをふり返りながら,今後の展望を考えあいたいと思います.
第2回人間発達講座 ――乳児期後半を中心に――
2001年2月24日〜25日
基調報告
第1講義 今日の子育てと社会的支援
鈴木佐喜子氏(白梅学園短期大学助教授)
保育所の待機児の大半は乳児であり,地域子育て支援事業を利用するのも圧倒的に乳児とその母親だといわれています.今日の保育や子育て支援の問題点の焦点は,乳児期の子育てにあると言えるでしょう.しかし,保育や子育て支援が今日の実態を踏まえ,また親の願いに根ざしたものになっているでしょうか.
この講義では今日の父母の労働や子育ての実態を明らかにしていただきながら,その背景にある問題点,さらに今後の保育や子育ての支援のあり方についてお話しいただきます.
第2講義 乳児期後半の姿勢と運動の発達
砂川 勇氏(滋賀医療技術専門学校副校長)
乳児の運動発達の基本はヒト固有の移動方法である二足歩行を獲得することによって完成します.二足歩行を獲得するために出生後約18か月,それまでに獲得した四つ這いを否定しながら,いっそう不安定な移動方法である歩行の獲得にむけて挑戦します.
乳児期後半では,臥位の抗重力姿勢を基盤に,支持面を狭くさせながら,垂直化へと進んでいきます.
今回はこうした二足歩行にいたるまでの運動発達を,乳児期後半に焦点をあてて解説していただきます.
特別講義 グリ,ときどきグランボー――働く人たちの目から見たフランス――
山本三春氏(ジャーナリスト)
私たちは「華やかなフランス」というような一面的なイメージ持ちがちです.人権,児童保護,有休休暇,ヴァカンス,35時間労働制などのフランスにおける高い到達点も,そこで暮らす人びとや歴史的な紆余曲折を理解すること抜きにはその全容があきらかになりません.
ここではそうした成果を生み出したフランス人の暮らしやその歴史などを,スライドや音楽を交えて紹介していただきます.
第3講義 乳児期後半の発達と発達保障の課題
田中昌人氏(人間発達研究所所長,龍谷大学教授)
生後第2の発達の階層である乳児期後半における,@3つの発達段階と,A第2の発達段階と第3の発達段階の間における生後第2の新しい発達の原動力の発生にみられる5つの過程,B生後第3の発達の階層(幼児期)への飛躍的移行の準備,Cこの時期における発達保障の課題と公的な基盤整備の基本方向,D発達障害がある場合の特徴と特別なケア,などについて,その概要を学びます.
第4講義 どうなる日本の福祉,どうなる私たちの生活
伊藤周平氏(九州大学助教授)
介護保険制度の実施,社会福祉事業法から社会福祉法へというように,福祉・保育の施設やサービスの利用が,措置制度から,企業なども自由に参入できる個人契約や個人利用へと移行されてきています.
そうした改革が,福祉のあり方をどのように変え,私たちの生活にどのような影響を与えるのか,今後を展望するために必要な視点や課題を学びます.
第1回人間発達講座 ――生命(いのち)の誕生と発達保障――
2000年2月19日〜20日
基調報告
第1講義 「いのち」を生きはじめる
福田静夫氏(日本福祉大学教授)
出生後の時期,子どもは初めて出会う子宮外の環境の中で独立した生命体として第一歩をしるします.また,最近の科学技術の発展は,人間の技術がより深く「いのち」に関与することを可能にしました.
乳児期前半の発達保障の課題は,こうした「いのち」を人間社会が支えることでもありますが,その「いのち」をどう見るのか,また社会はどうあるべきなのか,などについて学びたいと思います.
第2講義 乳児期前半の姿勢と運動の発達
砂川勇氏(滋賀医療技術専門学校副校長)
乳児の運動発達はヒト固有の移動方法である二足歩行を獲得することによって完成すると考えられます.この二足歩行を獲得するために,約18か月の時間をかけて,それまでの月齢で獲得した移動方法を積極的に否定しつつ,さらに不安定な方法に挑戦することを繰り返します.乳児期前半では出生後にはじめて経験する重力に抗して,外界の刺激を採りいれる“アンテナ”ともいえる頭部(顔)を対象物に対して自由にコントロールしようとします.
今回は二足歩行にいたる運動発達の乳児期前半までを,発達運動学を基盤に解説していただきます.
特別講義 クローンの生物学
岡田節人氏(JT生命誌研究館館長)
“クローン”なる語が,急に社会の関心をひくことになりました.これは,そもそもは発生学の問題・技術から由来したところによるものです.この講義では,クローンとは何であるかを,テクノロジーや人間倫理の深みに立ち入ることなく,生物学として客観的に語っていただきます.
講師紹介:発生生物学の分野で半世紀にわたって研究を続けてこられ,国際発生生物学学会会長,岡崎国立共同研究機構にて基礎生物学研究所長,機構長,国際生物科学連合副総裁などを歴任されています.今回の参考となる著書は,岡田節人『からだの設計図』(岩波書店),岡田節人・南伸坊『生物学個人授業』(新潮社)など.
第3講義 障害児医療の現状と課題
二木康之氏(大阪府立母子保健総合センター小児神経科科長)
周産期から神経学的ハイリスク児の長期フォローアップを通じて,周産期要因に基づく障害像の全容が把握されつつあります.この講義では障害発生の医学的メカニズムと障害像について学びます.また,あわせて,神経可塑性,神経障害の早期診断の技術の進歩,早期療育体制の問題点と課題についてもふれていただきます.
第4講義 胎生期から乳児期前半までの発達・発達障害と発達保障の課題
田中昌人氏(人間発達研究所所長,龍谷大学教授)
今回は,まず,胎生期における3つの発達の階層,すなわち卵体期,胎芽期,胎児期の各発達の階層内における3つの発達段階と階層間の飛躍的移行期について,また,各階層における第2から第3の発達段階に移行する過程でみられる胎生期における3度にわたる新しい発達の原動力の発生と,発生障害の基本特徴,発達保障の課題について学びます. 次に,生後第1の発達の階層における3つの発達段階と生後第2の発達の階層への飛躍的移行期について,また,第2から第3の発達段階への移行期にみられる生後第1の新しい発達の原動力の発生における5つの過程と,発達障害,発達保障の課題について学びます.